1年くらい前でしょうか。
初めてシンガーソングライターの方のライブに行きました。
クラシック人間の私としては、初めての「ライブ参戦」です。
ライブハウスに行くのも初めてです。
どのようなものかとワクワクして行きました。
初めての感想「狭っっっ」
そのライブハウスは、どうやら地下にあるようでした。
近くまで行きましたが、雑居ビルが立ち並ぶ街で、迷いましたね。
ようやくたどり着き、中に入って思ったこと。
「狭っっっ」
硬くて背もたれのない丸椅子が、びっしりと並んでおり、「自由に座ってね」といった感じでした。
ドリンクオーダーは必須でしたが、ドリンク置くスペースももちろん無く、お客さん同士、気を遣いながらすれ違っていました。
ライブ自体はとても素晴らしかったです。
あの小さい空間で聴いた生の音楽の感動は忘れないです。
行って本当によかったなと思いました。
しかしですね。
硬い丸椅子に2時間以上座っていたので身体は痛くなりました。
正直に言って観客にとって良い環境とは言い難かったです。
でもそこも含めて、「ライブハウス」なのでしょうね。
コンサートホールの素晴らしさ
ライブハウスを批判したいわけではありません。
たしか、このライブに6000円か7000円くらい払った記憶があります。
シンガーの方も、堂々と、この価格で売り出して満席にしていました。
観客として満足しましたし、その値段に見合うライブだったと思います。
でも同時に、私たちクラシックの演奏家が普段演奏しているコンサートホールってなんて素晴らしいんだろう、ということを再認識しました。
私設の小さなホールでも、素敵な場所がたくさんありますが、
大きめのホールの場合には、
- 大抵の場合、わかりやすい場所にある(建物が大きいし、公共の施設として整備されている)
- 音響のプロが設計している
- 舞台や照明もしっかり整っている(客席ではシャンデリアが輝いていることも)
- ふわふわの客席が整然と並び、通路もある(どの席からも見やすいように段までついていますね。)
こんな素晴らしい設備が整った場所で生演奏が聴けるのです。
しかも、音楽大学で専門教育を受け、クラシックを軸に研鑽を重ねてきた演奏家たちによる演奏が、2000円とか3000円とかで、聴けます。
ものすごく安くないですか???
なんでもっとこれが広まっていないんだろうと純粋に思いました。
「安売り音楽家」からの脱却を。
私はやはり、安売りしてしまう音楽家自身の意識の問題は大きいと感じています。
「安くしないとお客様が来てくれない」という思い込みです。
コンサートホールで聴けるというだけで既に大きな付加価値があるのに、それが当たり前すぎて誰も気づかず、その価値を伝えようという工夫もしません。
なぜなら、当たり前だから。
視点を変えて自分のいる世界を見てみるって、大事だと思います。
シンガーソングライターの方は、
「お客様に楽しんでもらう」
「自分が提供する時間に対してこの値段分の価値はある」
という意識で、当たり前に自信を持って6000円とか7000円のライブを提供されていました。
我々クラシックの音楽家も、演奏そのもの以外に、自分が提供する時間にどういう付加価値をつけられるのか、もう少し意識していけたらいいのではないかと思います。
アイデアはそこら中にあるはずです。
物を売りたかったら、その商品がどれだけ良いもので、どんな価値をもたらすのかを、丁寧に伝える必要があります。
「1の価値」を「10の魅力」として感じてもらう工夫は、ビジネスの世界では当たり前に行われています。
買う人がそれで納得してお金を払うなら、それは誠実な取引であり、何も悪いことではありません。
それが健全な資本主義経済の姿です。
値段を下げるのは簡単。
でも工夫をするのは大変だから、安く売ることに逃げるのですね。
体験への対価という視点
なぜかお金をいただいて自分の演奏を聴いてもらうことに抵抗感が大きい人が多いようです。
気持ちはわかります。
人前で演奏するのってドキドキしますし、
それに見合うパフォーマンスを届けるために、私たちはいつも努力しています。
でも観客は、演奏にお金を払いません。
払うのはそこで過ごす時間や体験に対してです。
自分が提供する時間には、日常には体験できないような、どんな楽しさや、豊かさがあるか。
そんな視点を持つ人が増えたら、クラシック音楽界も変わってくるのではないかと思います。
おわりに
クラシック音楽の価値を軽く見ているのは、ほかでもない、私たち自身なのかもしれません。
生でクラシックを聴けることにはものすごい価値があります。
そしてそれを届けられる私たち自身が、とても貴重な存在です。
だからこそ、その価値を分かってくれる人たちを一人ずつでも増やしていくために。
「来てよかった」「また来たい」
そう思ってもらえるような、そんな時間が届けられる音楽家でありたいですね。

